
うんと前、というわけではないが、面接を受けにいったときのこと。
その日は社長がめずらしく店にいて、少し話しただけでわたしはバイトをすることになった。
通りがかりの店にひょいと入っただけだったのだが、
わたしは一目見て社長のことをすきになった。
さる2月のギフトショー中、わたしは社長とふたりで店に入る日があった。
社長はいつでもわたしに、夢は思い続ければ叶うという。
その日、わたしは社長からその半生を聞くことができた。
アパレルメーカーに勤めながらバンド活動をしていたときのこと、
売れてきたけれど、おもしろくなくなって自分の作ったバンドを辞めると同時に、
今度はアメリカにいろいろなものを買い付けに行くようになり、
その中でモダンファニチャーに夢中になった時代のこと。
80年代、自分が惚れこんだアメリカのモダン家具を買い入れて店を作ったが
借金が増えるばかりで売れなかった時代のこと、それが日本で流行になったのは
10年後のことだったこと、家具をやめて古着の買い付けをはじめたら成功したこと。
二年前、確実な勝算があって家具をもう一度はじめたこと。
たのしいばかりではなかったはずなのに、それをたのしそうに語る。
男の人だなと思う。
夢ばっかりで生きているひと。
んん、と笑い、ビジネスではじめたから純粋な家具への興味じゃない、
といいながら、とてもうれしそうな顔。
とても魅力的な笑顔。
子供のように言い返してみたり、むきになったり、片づけをしないで店を出て行ったり、
ダイエットをしているのに甘いものには目がなかったり、言ったことをすぐ忘れたり、
根に持ったりしないひと。
わたしたちと同じ目線で話す。
すきなことをずっとすきでいられる人は魅力的だ。
流行と自分の好きなものを見据えて、ときどきとまどって、わたしたちの意見を聞く。
きまぐれなところもあるけれど、憎めない。
ばかでかい、赤いバイクに乗って忘れ物をしてゆく、そんな社長。
こんな人の経営する店は今日も繁盛している。
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